海外の反応「病理学のドクターが『はたらく細胞 3話』を考察してみた」

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経歴


こんにちは!私は病理学の分野で現在研修中の医師です。
あらゆる種類の人間の疾患を研究、分類することを仕事にしてます。普段は疾患が人体にあたえる影響や、特に疾患の細胞を研究することによってこのような研究や分類をしているよ。
「はたらく細胞」は清水茜が手がける作品で、擬人化された人間の細胞とこういった疾患とのバトルが見どころなんだ。
製作者は正確さや細部へのこだわりが強いみたいだから、そういった要素や背景知識をエピソードごとに解説して分かりにくい点を見逃さないようにするためにここに来たよ。
Dr.エイトボールと呼んでくれ。以下ネタバレあり!

大体遅れを取り戻したよ。申し訳ない、もっと早くに公開しようとしてたんだけど、臨床検査の当直の第1週目が始まって勉強で頭がいっぱいだったんだ、まあなんていうか、大失敗しないための勉強だよ。
今回のエピソードは獲得免疫システムの細かいところまで突っ込んだ話だけど、多分みんなが想像するようにかなり複雑なんだ。
正直、漫画を読んでからこのエピソードを観るまでの間に時間を割いて免疫学のテキストを読む必要があったよ。
いつもと同じく、みんなの相談役である /u/Rathurue のコメントは特に参考にしてほしいな。総合スレではすごく良い質問を見かけたし、もっと博識な人たちからのコメントがたくさんあればすごくうれしいな。

キャラクターの特徴 
細胞傷害性T細胞(CD8+ Lymphocyte : キラーT細胞)

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うおー!いつになったら好中球の話ができるんだ?まあいいや。
今回のエピソードのメインはウイルス感染だから、どちらかというとリンパ球全般、特にキラーTリンパ球(キラーT細胞)の考察をするべきだね。なんといっても今回の目玉はジョジョ新エフェクターTリンパ球(エフェクターT細胞)だからね。

リンパ球の背景知識(かなり大づかみ):リンパ球のような免疫細胞は獲得免疫システムで組織されているんだ。免疫システムは大きく分けて自然免疫システムと獲得免疫システムに分けることができる。自然免疫システムは常に体内に存在していて常に活動しているんだ。自然免疫システムの良い例としては好中球だね。それに加えてナチュラルキラー細胞や補体システム(後述)も良い例だ。ただしこの自然免疫システムの定義は全般的な防衛の役割を担っている肌や胃酸にまで拡大することができるよ。
その一方で、獲得免疫システムは体に侵入した細菌に特化しているんだ。活発に活動するには若干時間がかかるけど細菌に対して強力な免疫反応を示すし、メモリー細胞のおかげで長期にわたって免疫力を維持できる。
獲得免疫システムはさらに「T」リンパ球と「B」リンパ球に分けることができるんだ。直感的に考えて、T細胞(Tリンパ球)は直接細菌を倒す細胞、B細胞(Bリンパ球)は有益な抗体を生産する細胞と考えよう(もちろん実際はもっと微妙な違いがあるよ)。

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引用 : Abbas, Abul K.Lichtman, Andrew H. (2011) Basic immunology :functions and disorders of the immune system Philadelphia, Pa. ; Saunders

さて、CD8+リンパ球(キラーT細胞)、大きくてガッシリしてておっかない/威圧的なやつだ。直接細胞を倒すことが彼らの役目であることを考えるとこれは良いチョイスだね。
キラーT細胞は通常、タンパク質がもたらす作用(ターゲットの細胞の膜に文字通り穴を開ける:パーフォリン&グランザイム)、あるいはアポトーシス(ターゲットの細胞に自滅するよう伝える)を誘導するFasリガンドシステムを通じてこの役目を果たしているんだ。
これらのCD8+細胞のターゲットはウイルスに感染した細胞なんだ。通常、ウイルスに感染した細胞は表面上の特殊化した受容体にウイルスタンパク質を発現するんだけど、これは主組織適合複合体(MHC)あるいはヒト白血球型抗原(HLA)クラスI受容体として知られている。
HLAシステムは個別に考察する必要があるね。T細胞たちはさまざまな抗原提示細胞の表面上にある外来抗原を認識することで広範囲にわたって刺激を受けるんだ(ワオ!)。中でも樹状細胞は良い例だけどマクロファージやB細胞も抗原を提示することができる。
外来抗原の認識は一筋縄ではいかないんだ。リンパ球(通常、骨髄内で「誕生」して骨髄か胸腺内で成熟する)が認識できる外来抗原の範囲はあらかじめ決まっていてある程度ランダムになってる。これはVDJ遺伝子再構成と呼ばれる極めて複雑なメカニズムによって定められるんだけどね。そういうわけである抗原に対してあるリンパ球が反応するという保証はどこにもないんだよ。
長くなりすぎるからエピソードの話に進もう。




第3話 – インフルエンザ

ふむ、暗くておっかない場所だね。ここはどこだろう。
この場所で初めてインフルエンザが発見されたということから推測するに鼻咽頭の上部かな。
あるいはワルダイヤー輪かもしれない!

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ナイーブT細胞だ、いやー可愛い。
これらは「成熟」したTリンパ球だけどまだ活性化してないんだ。体循環の中で発見できるけどリンパ球の豊富な組織に集中していることが多いね(脾臓やリンパ節、パイエル板、扁桃腺など)。

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ウイルス発見!ウイルス感染が新キャラクターではなくゾンビの大発生になっている理由が気になる人もいるかもしれないね。彼らの大きさの違いを考えよう。インフルエンザウイルス粒子はたぶん100ミクロンくらい、それに比べて赤血球はその75倍はあるだろうね。
言うまでもないけど一般的にウイルスは繁殖のために細胞に感染する必要があり、細胞の正常なタンパク質生成機能をハイジャックしてより多くのウイルス粒子を作るんだ(あるいは驚くことに、宿主細胞のDNAと一体化するんだ)。

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U-1146(白血球)が助けに来た!うーん、ウイルス感染した細胞と戦ってどうしたいんだろう?ウイルス感染における好中球の役割はよく知らないけど中心的な寄与因子ではないのは確かだよ。どうやって細胞が外来のものと認識したのかもよくわからないな。というのも自分の知るかぎりでは好中球はMHCクラスI受容体のための受容体を持たないんだ(MHC Iそのものは発現するけど)。
Oh 好中球の壁歩きトリック(遊出)については前回考察したね。

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さて、インフルエンザの解説の時間だ。
インフルエンザはもっとも広く流行している重要なウイルス感染のうちの一つなんだ。
インフルエンザはRNAウイルスだけどめちゃくちゃ複雑というわけじゃない。8つの遺伝子産物しか持たないんだ(細胞との結合や融合を促進するヘマグルチニン、感染した細胞からウイルスを切り離す手助けをするノイラミニダーゼ、そして薄膜/莢タンパク質)。
通常は気道の上部で感染を引き起こし、粘液分泌細胞と線毛細胞を破壊するんだ(これにより気道部分の主要な防衛システムを無効化する)。たいていの症状は免疫介在性反応から生じるけど、これは後でわかるよ。




インフルエンザについて知っておくべき非常に重要なことは、頻繁に突然変異するということだね。時間とともに生じる小さな変化に起因して抗原ドリフトが生じるわけだけど、このせいで衛生行政機関は毎年新しいワクチンを開発する必要があるんだ。
しかし、ゲノムが他のインフルエンザウイルスと混ぜ合わさった状態になると、悪名高い抗原シフトが生じることもある。これは古くから動物の間で起きている現象なんだ(そのため「豚インフルエンザ」「鳥インフルエンザ」と呼ばれる)。
Oh あとはインフルエンザA & Bを見るだけだね。

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インフルエンザウイルス粒子
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マクロファージが登場した!以前マクロファージのことを免疫システムの門番と呼んだことがあったけど、彼らはものすごいマルチタスク細胞でもあるんだよ。
微生物を倒して摂取し、抗原に提示し、そして局所反応を調節するんだ。
マクロファージたちもお気に入りの免疫細胞だよ(Bリンパ球も)。
より深い考察は今後のエピソードへ先送りするよ。

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賢い対応だ!ヘルパーCD4+細胞が免疫反応を調節するために呼び出されたね。
マクロファージが電話をかけることが出来てしまうのはフェアかどうかよくわからないけどね。マクロファージがリンパ球センターに破片を運ぶか、流れてきたペプチドを樹状細胞が拾うかもしれないと予想してたよ。

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CD8+細胞傷害性T細胞が到着したね。感染の最中にはCD8+細胞傷害性T細胞が感染源に続々と流れ着くんだけど、彼らが認識できる抗原が存在するか否かで彼らが感染源付近にとどまるかどうかが決まるんだ。たぶん彼らはこれ以前にインフルエンザ(あるいはそれに似たもの)を見たことがあるのかな?

それと新人いびりは自分の知る限りでは彼ら特有の振る舞いではないね笑
隙間から出てきた好中球を引っ張って手伝う必要もないね。

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ああそうだ、あの中にメモリーT細胞がいるんじゃないかな。どんな適応免疫反応でも通常はメモリーB/T細胞を生成するはずだからね。これらの細胞は再感染した場合には初感染時よりもはるかに早い反応を見せるんだ。遺伝子変異性や抗原性変化があまり見られない感染に対してはすごく効果がある(水疱瘡には一度しかかからないでしょ?)けど、インフルエンザのような常に変異を繰り返すものに対してはあまり役に立たないんだ。

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ナイーブT細胞はリンパ球センターに撤退中だと思うな。良いストーリーを作るために若干複雑な展開になってるね。
CD8+細胞は抗原提示細胞によって活性化されることを覚えてるかな、樹状細胞はまさに抗原提示細胞なんだ。でも一般的には最初に抗原に出会うのは抗原提示細胞だろうね。リンパ球はペプチドを見ることで活性化されるんだ。励ましの言葉もナイスだけどね。

「CD8+T細胞の活性化に見られる特有の特徴として、活性化の開始にはしばしば樹状細胞によって細胞由来の細胞質抗原が抗原提示される必要があるという点が挙げられる。もう一つの特徴はこれらの細胞の細胞分化であり、細胞分化にはCD4+ヘルパーT細胞の同時活性化が必要となる場合がある。」2  
よし、あまり深入りしないようにしよう。

Oh ところで、感染した細胞が免疫細胞にここまで反撃することはないと思う笑

基本的に彼らは座り込んでウイルス粒子を大量生産するんだよ。

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Tリンパ球が活性化した!今度はリンパ球のチームの登場だね(この1つの細胞がクローン展開した)。彼らはインフルエンザの匂いにだけ狙いを定めて向かっていくんだ。
実際には彼が現れるのには数日かかるよ。

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B細胞も現れたね。B細胞に関する話はまた今度するからそれまで待っていてほしいな。一度の投稿で適応免疫の全てを話すことはできないからね。
とりあえず知っておくべきことは、B細胞は抗体を生成するが、通常はもっと遠く離れたところから生成することと、B細胞の抗体生成はTリンパ球と同じようなプログラムになっていて、非常に的を絞ったものになっているということだね。

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全身性反応の時間だ!免疫細胞(間質細胞/上皮細胞も同様)が活性化すると通常大量のサイトカインが生成されるんだ(この場合はおそらくインターフェロン-γ、インターロイキン1 & 6、など)。
これにより体温の「設定温度」を上昇(熱)させる視床下部が反応し、「ウイルス症候群」と呼ばれることの多い、さまざまな倦怠感を伴った全身症状が生じるんだ。
実は食欲減退には興味があるから後で調べてみるよ。

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なんてこった、このウイルスは細胞傷害性Tリンパ球が平気なのか。これはウイルスがさらなる遺伝子変異を起こしたため(まだ)免疫システムがこのウイルスを認識していないということを表してるよ。認識するまでにはもう数日かかるけどね。




A型インフルエンザは動物に感染するため、抗原シフトを生じやすいことで知られている型なんだ。実際、これが体の外部からやってきた新しいウイルスだと視聴者が受け取るように描写されていると思うよ。

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知っている限りでは血小板と樹状細胞が実際に関わりあうことはないと思うな。
自分の考えを否定してくれる原著論文が出てくるのを待ってるけどね笑

終わりに

インフルエンザはかなり重い感染症だし洒落にならないんだ。
大多数の人は何事もなく治る(大抵のインフルエンザはかかると、熱や上気道感染、頭痛、筋肉痛などの症状でめちゃくちゃ具合が悪くなるけどね)けど、病気に対して脆弱な集団の中では非常に危険なんだ。
これまでに体の「外部」からの助けが一切ないことに気付いた人もいるかもしれないね。最初の2つのケースは治療するほどのものではなかったかもしれないけど、今回は間違いなく治療を受けただろうね。
悲しいかな、インフルエンザの治療法は少ないんだ。有効性には疑問が残るし効果が持続する期間も非常に短いんだよ(症状が現れてから48時間以内など)。 通常の処置はちゃんと治療の力添えになるだろうね(水分と休息)。

次回も複雑そうだね。食中毒は分野が幅広いし、さまざまな毒素や病原体が関係してくるんだ。
すぐに読んで調べられるから漫画を持っててよかった・・・

1 Murray, Patrick R., Ken S. Rosenthal, and Michael A. Pfaller. 2013. Medical microbiology. Philadelphia: Elsevier/Saunders.

2 Abbas, Abul K.Lichtman, Andrew H. (2011) Basic immunology :functions and disorders of the immune system Philadelphia, Pa. ; Saunders







1 Comment

名無し

書き込む医者の卵もすげぇが、このボリュームを翻訳する
管理人さんもすげぇ。

3話も面白かったけど血小板ちゃんがほとんど出てないのが
不満。もっとだ!もっと出番を!!

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名無し

インフルエンザウィルスの大きさは100ミクロンじゃなくて100ナノメートルくらい
誤訳じゃなくて出典元の時点で間違って書かれてるけど

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名無し

医学用語満載の英文ってガチで意味不明だからなあ。翻訳できるのが凄いわ。

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名無し

>知っている限りでは血小板と樹状細胞が実際に関わりあうことはないと思うな。

※2みたいな人へのファンサービスだからね。

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名無し

お疲れ様です、翻訳ありがとうございます
いやー、ここまで考察してるのすごいね、面白かったよー

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名無し

英語の専門用語ってほんとチンプンカンプンだよな
日本みたく表意文字だと意味が何となく推察出来るけど
逆に自閉症とか肥満細胞とか悪い翻訳で誤解を生んだりもする
何にせよ専門用語ってのは翻訳が難しい

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名無し

医学知識はためになるけど、それをアニメに落とし込んだ時のわびさびが理解できないんだろうなと
海外に合わせるならキャップとアイアンマンがなんで一緒にいるんだよみたいな無粋なツッコミ

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